発酵食品を普段の食生活に当たり前のように取り入れている、日本の食文化。お味噌やお醤油、お酢やみりんなどの基本調味料もすべて発酵食品です。
そのなかで最近よく耳にするのが、「麹」と「酒粕」。どちらも甘酒に使われる一般的な食材ですよね。ですが、実際どんな成分があってどんな人におすすめなのかは意外とわからないもの。
「麹は聞いたことあるけど、説明はできない・・・」という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回は、麹と酒粕の違い、それぞれの成分についてわかりやすく説明します!
「麹」=食品に適したカビ!?
「麴菌」(こうじきん)を調べてみると、このような説明が出てきます。
麴菌とは日本酒やみりん、醤油、味噌などの伝統的な日本食品の製造に必要な微生物の一種。学名Aspergillus oryzae(アスペルギルス オリゼー)と呼ばれる菌類で、米や大豆、麦などの穀物や豆類に含まれています。でんぷん等を分解する酵素を分泌し、アミノ酸や糖分、抗酸化物、ビタミンB群などの成分を生み出します。
…ちょっと難しいですね。もう少し詳しくご説明します。
菌類は自分の子孫を増やすためだけに活動しています。子孫の増やし方は菌によってさまざまなのですが、菌の場合その栄養はどこから得るのかというと、自分がくっついた食品を利用します。どうやってその食品を食べるのかというと、自分の体から「酵素」を出して分解するのです。これを人に例えると、口から胃液を吐いて食べ物をドロドロに溶かしてから食事をする、という事になります。(変な話ですみません・・)
要するに細菌はおなかの中に「胃」や「腸」などの消化器官がないので、酵素をペッと吐き出して食品を分解し、小さい分子になった栄養を自分に取り込んでいくのです。
そのため、麹がお米にくっついて良い環境で繁殖が進むと、お米がドロドロのおかゆ状になっていき、これを「甘酒」とか「もろみ」など仕込みの状況によって呼び方があるのです。
甘酒がどろどろに溶けたおかゆ状態なのは、この「麹」がこういった活動を行ってできた結果なのですね。
「酒粕」=日本酒の搾りかす!
では今度は「酒粕」について説明していきましょう。先ほどの「麹」がお米をおかゆ状にドロドロにしたところへ「酵母」という菌が入ります。酒粕の場合は2種類の菌が係わっているところが最大のポイントです。
「酵母」は糖を食べて『アルコールと炭酸ガスを作る』のがお仕事です。
日本酒を造る場合、まず酒米を蒸してから麴菌を加えて増殖させます。この過程で、麴菌が分泌する酵素がでんぷんをブドウ糖に分解し、たくさんの糖分を作ります。この工程でできた糖分を酵母がアルコールに変え、日本酒の素が作られるのです。この時も見た目は「おかゆ状」です。
このおかゆ状の日本酒の素を絞ると「液体」と「お米のペースト」に分かれます。
この液体が日本酒であり、残ったお米のペーストが「酒粕」です。
それぞれの「良いところ」と「抑えたいポイント」
麹も酒粕も栄養面において優れていますが、それぞれに特徴と注意点があります。
【麹】
麹がお米を溶かした状態の「甘酒」は、発酵とは呼ばず「糖化」という活動です。炭水化物を分解して「グルコース」という小さな糖分にします。ごはんやパンを口の中でずっと噛んでいると甘くなってくるのと同じ現象ですね。
麹菌による糖化は、食品の味や香りを良くするだけでなく、炭水化物を単糖に分解することで、消化吸収がよくなるという利点もあります。また、糖化液は、アミノ酸やビタミンなどの栄養素が豊富に含まれており、身体に良い影響を与えるとされています。
甘酒が「飲む点滴」と呼ばれるのはこういった理由からです。すぐに栄養補給したい、また胃腸に負担なく栄養を摂りたいときに最適な飲み物といえます。
しかし、「吸収されやすい糖」なので飲みすぎには注意が必要です。
血糖値が高い方、高めの方にはあまりお勧めできない飲み物です。
ご自身の体調にあった量と飲むタイミングを調べる必要があるので気をつけてくださいね。
【酒粕】
日本酒からとれる酒粕は麹甘酒の良いところに麹だけでは得られなかった栄養素が生まれます。こちらは発酵食品ですので、さらに健康効果が期待できます。
人に有用な栄養素が500~600も含まれているといわれており、栄養だけでなく、腸活や美容、うつや冷え、内臓機能改善、ガン予防など上げたらきりがないくらいの効能を持った栄養素を含みます。また、酵母が糖を利用していますので、麹の甘酒より低糖質です。
しかし、日本酒からとれる副産物なので「アルコール」に注意が必要です。
小さなお子様やアルコールに弱い方、妊産婦さんは残留アルコールが気になると思います。また、車を運転される方は特にですが食べる時間にも注意が必要になります。
どちらも米と細菌の活動による素晴らしい食材
それぞれ注意しなければならないポイントもありますが、どちらも非常に優れた食品です。また、ポイントを押さえておけばどちらも日常の食事に使えるレシピが色々出ています。
酒粕専門店のHacco to go!では、酒粕の「アルコールを抜くコツ」や「レシピ」もご紹介しています。日本の優れた発酵食品を、無理なく日常の食事に取り入れたいですね!
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